Column

オールドスタイル

気持ちのいい晴れ空を見上げ、肩にかけたカメラを構えた。
心を動かされる風景に出合えた時、その瞬間を切り取って残したい、と切に思う。
イマドキはサッとスマホを取り出して、ポチッとするだけでいい。
簡単に僕の望みは叶えられるだろう。
けれど、僕はそれを良しとしない。
何もかもおまかせのスマホカメラが物足りないのだ。
そして何より、心が動いたはずの風景が少し色褪せて見えてしまう。
もちろん、ハイスペックなスマホカメラによるフォトグラフは、美しく精巧だ。
けれど、温度を感じない。
だから、味気ない。
まあ、あくまでも個人の感想、ではあるけれど。

僕の一眼レフカメラはオールドスタイル。
デジタルではなく、フィルムを入れて使うタイプだ。
枚数に制限のあるフィルムは、無駄なシャッターが切れない。
もちろん、後から色を調整したり、加工を加えたりすることもできない。
だからと言って、慎重になりすぎてもいけない。
シャッターチャンスは一瞬だ。
今だ! と思ったら、迷わずシャッターを切る。
そんな思い切りも必要なのだ。
うらはらに、シャッターチャンスが訪れるのをじっくりと待つこともある。
たとえば、マジックアワーの幻想的な空。
自分好みの色合いになるまで、シャッターは切らない。
けれど、当たり前だが、自然はこちらの思惑など知る由もない。
理想の色合いに染まるまで、何日も粘ること根気も時には必要だ。
カメラとともに、最高の瞬間をひたすら待ち続ける。
そんな時間もまた、写真の醍醐味だと僕は思っている。

週末ごと、シャッターチャンスを求めて、僕はいろいろな場所へ出かけていく。
心掴まれる風景に出合えず、1度もシャッターを切らずに帰ることもあれば、35mmのフィルム1本では足りないほど、シャッターを切りまくる旅もある。
それも運次第、気分次第だ。

そんな旅の中で、シャッターチャンス以外にもうひとつ、探しているものがある。
それは、撮影の拠点となる場所。

僕には夢がある。
いつか、写真だけに没頭できる小さなアトリエを持つことだ。
できればそれは、便利な都会のワンルームではなく、ちょっと不便な自然あふれる場所にあればいいと思う。
思わずシャッターと切りたくなるような風景と、たくさん出合える場所であればいいと。
ここにアトリエを持ちたい!
そう思える風景を、僕は旅の中で探し続けている。

小さなアトリエには暗室も作りたい。
現像から紙焼きまで自分の手でやるつもりだ。
日常から切り離された場所で、思う存分、写真と向き合う。
それはきっと、とても贅沢な時間だろう。
想像するだけでワクワクしてくる。
そんな「いつか」が今から楽しみで仕方ない。

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