別荘や二拠点生活のために土地を探すとき、多くの方が不動産情報などを通してハザードマップを確認します。
しかし実際には、それだけで土地の安全性を判断することはできません。
大切なのは、ハザードマップでリスクを把握したうえで、その場所に立ち、地形や環境を自分の感覚で確かめることです。
同じエリアの中でも、わずかな高低差や斜面の位置によって、安全性は大きく変わります。私たちは、神奈川県相模原市緑区青野原で、二拠点生活のためのミニマルな別荘「MOKKEJA(モッケヤ)」を設計・建築しました。土地の選定にあたっては、現地に何度も足を運び、地形や周辺環境を確認検討をしました。
この記事では、青野原という具体的な土地を例にしながら、
・地形から見る、安全な土地の見極め方
・ハザードマップをどう読み解くか
・実際の災害から何を学ぶべきか
建築事務所の視点と実体験をもとに解説します。
自然に近い場所で、安心して過ごせる拠点を持ちたいと考えている方にとって、土地選びのヒントになれば幸いです。
青野原の実例から見えてきた、自然環境での土地選びのポイント
- 河岸段丘に見られる地質・地形の特徴
- ハザードマップを現地環境と照らし合わせる具体的な視点
- 2019年の台風19号の被害を、公開情報と現地環境から読み解いた結果
では、具体的にどのような視点で土地を見ていったのかをご紹介します。
安全な土地の見極め方①:河岸段丘の“平らな中央”を選ぶ
橋本から道志へと続く国道413号を車で走っていると、ふと視界が開け、気持ちのいい野原が広がります。
キャンプや山梨方面への移動で、この道を通ったことがある方も多いのではないでしょうか。
その場所が、相模原市緑区、青野原です。
青野原の多くの土地は、河岸段丘(かがんだんきゅう)と呼ばれる、川の侵食によってつくられた階段状の地形の上にあります。
1. 地盤が安定している
河岸段丘の平らな面は、長い年月をかけて土砂や小石が締め固められてできています。
そのため、造成された土地や川沿いの低地に比べて、比較的安定した地盤であると考えられます。
2. 水害のリスクを避けやすい
段丘の平らな面は、現在の川よりも一段高い位置にあるため、大雨時にも水が流れ込みにくい構造になっています。また、水は低い場所へ流れるため、同じエリアでもわずかに高い位置を選ぶことが重要になります。
3. 崖崩れの影響を受けにくい
注意すべきなのは、平らな面でも「端」や「斜面の近く」です。
崖の近くは崩落の影響を受けやすいため、できるだけ中央付近を選び、斜面との距離を確保することが大切です。
このように、同じ河岸段丘の中でも、「どこに位置するか」によって安全性は大きく変わります。
私たちも実際に現地に立ち、周囲の斜面との距離や高低差を確認しながら、無理のない範囲でリスクを避けられる場所を選びました。
安全な土地の見極め方②:孤立しない“道路条件”を確認する
地盤の強さに加えて、私たちが土地選びで大切にしたことがあります。それは、いざというときに、道路が封鎖されて孤立しないという視点です。
自然豊かな山あいの地域で暮らすとき、私たちはどうしても敷地そのものの安全性に目を奪われがちです。しかし、どれほど頑丈な地盤の上に家を建てても、そこへ続く唯一の道がふさがってしまえば、身動きが取れなくなってしまいます。
記憶に新しい、2019年の台風19号。このとき青野原を通る国道413号(青根付近)やその周辺の脇道では、斜面の土砂崩れや路肩の崩落がいくつも発生しました。実際、さらに奥の地域では、長期間にわたる通行止めや停電が発生し、移動や物資の確保が困難になる事態も起きています。
自然の奥深くに分け入った、誰にも邪魔されない隠れ家のような場所は、確かにセカンドハウスとして魅力的です。
私たちは災害時の避難や移動のしやすさも現実的に考慮しました。
いつでも自分の意思で安全に移動できること。
これは、自然の中で安心して拠点を持つために欠かせない条件のひとつです。
また土地を見る際には、
・接道している道路が1本だけではないか
・周囲に迂回できるルートがあるか
・斜面や川によって分断されやすい立地ではないか
といった点もあわせて確認しておくと、孤立リスクをより具体的に判断することができます。
ハザードマップの正しい見方 現地で必ず確認すべきポイント
土地を検討する際、多くの方がまず手にするのが、各自治体が発行しているハザードマップだと思います。
ハザードマップは、過去のデータや地形条件をもとに作られた”想定”です。
そのため、実際の細かな地形や土地ごとの状況までは完全には反映されていません。
私たちは、マップを手に青野原の現地に立ち、自分の足で歩いてその地形と照らし合わせました。
実際に現地で確認する際には、以下のような点を意識すると、ハザードマップの情報をより正確に読み取ることができます。
・背後に急な斜面がないか(特にすぐ近くに迫っていないか)
・斜面との距離が十分に確保されているか
・土地が周囲と比べて低くなっていないか
・水の流れ(雨水がどこに集まりそうか)
・道路が塞がれた場合に別の経路があるか
ハザードマップを見るときに大切なのは、「色がついている=危険」と単純に判断しないことです。
「どこが危険か」だけでなく、「なぜそこが危険とされているのか」を意識して見ることが、正しく読み解くためのポイントです。
例えば、浸水想定区域として色がついている場所でも、その理由はさまざまです。
川の氾濫によって水が広がると想定されているのか、周囲より低く水が集まりやすい地形なのかによって、リスクの性質は異なります。
前者であれば川からの距離や高さが重要になり、後者であれば、同じエリアの中でもわずかに高い場所を選ぶことで影響を避けられる可能性があります。また、土砂災害警戒区域についても同様です。
単に範囲として捉えるのではなく、「どの斜面が崩れる可能性があるのか」「その斜面からどの方向に影響が及ぶのか」を確認することで、実際に影響を受けやすい位置とそうでない位置を見分けることができます。
ハザードマップはあくまで広い範囲での“目安”であり、最終的には現地の地形と照らし合わせて判断することが重要です。
実際の災害から見えた「安全な土地と危険な土地の違い」
2019年の台風19号では、緑区、特に青野原を含む津久井地域で甚大な被害が発生しました。
当時の被害状況をハザードマップと照らし合わせていくと、同じ地域の中でも、地形によって被害の出方が大きく異なっていたことが見えてきます。
例えば、青野原を流れる道志川のすぐ横にある低い土地では、急激な増水によってキャンプ場の施設が流失し、地面そのものが削り取られる被害が発生しました。
一方で、斜面が迫る場所や旧道では、土砂崩れによって道路が寸断され、ライフラインが一時的に遮断される事態も起きています。
こうした被害が集中したのに対し、川から距離があり、より高い位置にある河岸段丘の平らな面では、浸水や土砂崩れの影響を受けにくい状況でした。
つまり、同じエリアであっても「高さ」や「斜面との位置関係」によって、安全性は大きく変わります。
自然の美しさを楽しむためには、その土地のリスクを理解し、向き合うことが欠かせません。
ハザードマップと実際の地形、そして過去の災害の記録を重ねて読み解くことで、無理のない形でリスクを避けることができます。その積み重ねが、自然の中でも安心して過ごせる拠点づくりにつながると、私たちは考えています。
まとめ
ハザードマップの確認は、土地選びの出発点としてとても重要です。
実際にその場所に立ち、地形の高低差や斜面の位置、周囲の環境を自分の目で確かめることで、暮らせる土地かどうかが見えてきます。
机の上の情報だけで判断せず、現地に足を運ぶこと。
それが、安心して拠点を持つための大切な一歩だと考えています。
もし青野原の近くを訪れる機会があれば、景色だけでなく、ぜひ周囲の地形にも少し目を向けてみてください。
河岸段丘の高低差や、斜面との距離感など、実際にその場に立つことで見えてくることがあります。
安全性と心地よさの両方を満たす土地は、必ず存在します。
その見極めの一歩として、まずは実際に現地に立つことから始めてみてください。
体験会へのご招待
この土地選びの方法で選んだ土地に、建築家のこだわりをつめこんだセカンドハウスを建てました。
普段は建築家本人が家族と週末移住をしている場所ですが、モデルルームとして公開しています。
なお、準備の都合上、体験会は事前にご連絡をいただいた上でのご案内となります。



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