欅(ケヤキ)の記憶を、マンションの顔に

李です。

ケヤキと聞くと、表参道の力強くまっすぐに伸びる並木道を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
現在、竣工を間近に控えたマンションのエントランスに置く、特注のケヤキベンチを制作中です。

本日はモッケヤからほど近い作業場へ伺いました。
主役は、長さ2メートル、直径30センチという見事な欅(ケヤキ)の一本木。

実は今回のケヤキ、棟梁の家で20年もの間、大切に保管されていたものを譲り受けたものです。
表面を削り仕立て直すと、長い年月を経てもなお、瑞々しささえ感じる見事な質感が現れました。

ケヤキは古来より尊い木とされ、その耐久性から城門や大黒柱に使われてきた特別な木です。
時を重ねるほどに深みを増す、力強い木目が一番の特徴です。

片側の断面には、自然乾燥の過程で生まれた割れがありました。
その割れを止めるため、蝶ネクタイのような形の補強材、ちぎりを打ち込んでいます。


ちぎりを入れるには、本体に寸分狂わない穴を掘り、金づちで叩き込む精密な技術が必要です。
少しでも隙間があれば用をなさず、強すぎれば本体を割ってしまう。
あえて傷を隠さない、腕のいい職人の技によって、キズもちぎりも唯一無二の意匠へと生まれ変わりました。


写真は、木目の美しさを最大限に引き出すための色検討(保護剤の選定)を行っている様子です。
置かれる場所の光を想像しながら、慎重に色を選びました。
本物のケヤキが放つどっしりとした安心感と穏やかさで、入居者のみなさまをお迎えするエントランスの顔になってほしいと願っています。

一級建築士 李 孝哲

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